ゴッゴルベリーの冒険 【序章】(1)

 どんな都会にも、そして田舎にも、春はひとしくやって来ます。
 ゴッゴルベリーの住む村でも、そろそろ雪解けの季節になりました。
 ちっちゃなゴッゴルベリーより大きな雪の山も、暖かい日差しに照らされて、毎日ちいさくなっていきます。
 畑から雪が消える頃には、ゴッゴルベリーのお父さんも帰ってくるはずです。お父さんは、遠くの町でいっしょうけんめい働いて、家族の為のたくわえと、ささやかなおみやげを持って帰ってくるのです。


 「お父さんはいつ帰ってくるのかな」「どんなおみやげを持って帰ってくれるのかな」
 ゴッゴルベリーは、おかあさんのスカートを引っ張って、いつものようにたずねました。


 「良い子にしてれば、すぐに帰ってきますとも」「良い子はお母さんのお手伝いをできるわね」
 おかあさんも、いつものようにニッコリと答えました。


 それは、小春日和のいつもの風景でした。
 おととしも去年も、そして今年も変わらないはずの、楽しい春の風景でした。

 そう、ゴッゴルベリーのちいさな家の前に、見たことも無い立派な馬車が止まった、その日がやって来るまでは。


 (【序章】(2) へ続く)
 この小説モドキは、オムニバス小説ゴッゴル参加作品です。