「ファイルローグ」裁判

 この裁判(中間判決時点)で被告(エム・エム・オー)の過失が認められた理由の一つに、『利用規約による著作権等侵害行為の防止が不十分である』との判断があるようです。
 利用規約による権利侵害行為の禁止が実効を伴っておらず、それを知りながら有効な対策を打っていなかった点に、被告の過失が認められています*1


 今回の件(はてな住所登録の件)で重要なのは、権利侵害行為の防止策として実効性がある、十分な処置を行うことのようです。
 住所確認(本人確認)でそれが可能かどうか、やってみないと分からないところですが、まあ順当かなぁとは思います。*2


 ファイルローグ事件のときは、規約で禁止されているにも関わらず、全体の96.7%のファイルが権利侵害を行っていたことを以って防止策として不十分とされたようです。はてなのサービスでも同様の判断がなされるかどうかは微妙ではあります。
 でも、ユーザー登録情報が正確ではないとカミングアウトしたユーザー( = 規約違反をしていると宣言したユーザー)がこれだけ居るなら、放置すればやはり過失と判断されるかもしれませんね(^^;


H15.12.17 東京地裁 平成14(ワ)4249 著作権 民事訴訟事件」(中間判決部分)

平成14年(ワ)第4249号著作隣接権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成14年12月2日

中間判決

(略)

事実及び理由
(略)

第3 当裁判所の判断
(略)

2 争点(3)(被告らの損害賠償責任の有無)について
(1) 被告エム・エム・オーの損害賠償責任の有無
ア 事実認定
(略)

イ 過失の有無に関する判断
(ア) 以上認定した事実によれば,被告エム・エム・オーは,遅くとも,本件サービスの運営を開始した直後には,本件サービスによって,他人のレコードについての送信可能化権が侵害されていることを認識し得た。
 そうすると,被告エム・エム・オーは,本件サービスの運営を行う際に,このような著作権等の侵害が行われることを防止するための適切,有効な措置を講じる義務があったというべきである。しかるに,被告エム・エム・オーは,著作権等の侵害を防止するための何らの有効な措置を採らず,漫然と本件サービスを運営して,原告らの有する送信可能化権を侵害したのであるから,同被告には,この点で過失がある。したがって,被告エム・エム・オーが本件サービスを提供する行為は不法行為を構成し,被告エム・エム・オーは,原告らが本件サービスの運営によって被った損害を賠償する責任があるというべきである。
(イ) この点について,被告らは,(1)本件サービスにおいては,利用者は,パソコンの画面上で,著作権等を侵害する電子ファイルを送信可能な状態としないことなどを内容とする利用規約に同意する旨のボタンをクリックしない限り,本件クライアントソフトをダウンロードすることができない仕組みとされていること,(2)被告エム・エム・オーの利用規約によれば,著作権等の権利を侵害する電子ファイルを送信可能化することを禁止すること,送信可能な状態に置かれた電子ファイルにより権利が侵害されたと主張する者から,当該ファイル公開の停止(共有の解消)を求められたときは,利用者は「ノーティス・アンド・テイクダウン手続規約」に従うべきとされていることから,被告エム・エム・オーの注意義務は尽くされている旨主張する。
 しかし,本件サービスにおいては,利用者の戸籍上の名称や住民票の住所等,本人確認のための情報の入力は要求されておらず,被告エム・エム・オーが講じたこのような措置は,著作権等侵害行為を防止するために十分な措置であるということは到底できず,この点の被告らの主張は採用できない(実際にも,本件サービスにおいて送信可能化されたMP3ファイルのうちの96.7パーセントは市販のレコードを複製したものであり,被告エム・エム・オーの講じた上記措置が全く実効性のないものであったことが明らかである。)。
(略)

(強調は、sasadaによります)

*1:ちなみに、引用部分では割愛してますが、損害賠償を認める理由として、有料サービス化の計画が有る点や当該サービスに広告等による収入が有る点を挙げられてます。(被告に相当の利益があったとの判断)

*2:「ここまでせにゃルールが守れないのか」という思いと、「これでルールが守れるようになったら匿名の正当性ってナンだったんだろう」って考えで、メランコリーな秋です(^^;