私の敬愛するd:id:kowagariさんの日記に『ここ一年二年、はてなに対して思ったこと - おれはおまえのパパじゃない』という記述があります。
 2007-3-6付けと言うことで、私の復帰の若干前だったので、発見が遅れてしまいました。ごめんなさい。
 懐かしい思いを込めて、当時を振り返ってみたいと思います。(大長文です)


 さて、d:id:kowagariさんの記述に

そんで、自己顕示欲と誹謗中傷がはびこるコメントを大量につけてあげることが、はてなブックマークの目指していた世界なのかっていう。ここらへん、仕様ひとつでなんとでもなる部分だったんじゃないかっていう。俺の記憶が確かなら、コメントやタグをつけたいという要望があって、それによってこういう仕様が決まったと思うんですけど(違ってたらごめんなさい)、それはユーザーの要望を満たすんじゃなく、はてなという会社の思想によって決めるべきことだったんじゃないかっていう。

ここ一年二年、はてなに対して思ったこと - おれはおまえのパパじゃない

というくだりがあります。
 ここでいう『ユーザーの要望』と言うのが、主に私(や他の声の大きかった方々)の要望を指しているのではないかと、自己顕示欲丸出しで憶測しつつ、当時を振り返ってみたいと思います。なんせ、はてなアイデアが未だ存在しない、開発される直前の出来事でしたから。

のっけから蛇足ですが、私の立ち位置

 私はもちろん、d:id:kowagariさんの御意見、『自己顕示欲と誹謗中傷がはびこるコメントを大量につけてあげることが、はてなブックマークの目指していた世界じゃないはずです。』に賛成です。
 私だって、『050609 はてな利用規約改定案に関する意見』の折にドサクサに紛れて、利用規約の第6条(禁止事項)についての改定意見として、

はてなRSS用に『チェック対象ウェブページ管理者および関係者に対する嫌がらせを目的として、フィードを登録する行為』、はてなブックマーク用に『チェック対象ウェブページ管理者および関係者に対する嫌がらせを目的として、URIやコメント等の情報を登録する行為』を付け加えても良い頃合かもしれません。


とくにブックマークは、メタブックマークのコメント等で、雰囲気のよくない行為が出始めたことでもありますし。。。
 はてなRSSの方は、アンテナ同様、タイトルやグループ名での嫌がらせ行為を想定した禁止事項を念頭においてみました

と提出させていただきました。(メールでの意見募集でしたので、引用元リンクが有りません。御了承ください)
 当時、『050623はてな利用規約改定に関する意見の概要』掲載の検討結果にて、

  • はてなRSSはてなブックマークなどの新しいサービスに関して禁止事項を定める必要があるのではないか
    • 正式版公開にあわせて検討したいと思います。ご指摘有難うございます

と、未採用となったのが、今でも残念です。
 もう正式版になったんだから、是非とも再検討していただきたいものです!! (既に検討済み不採用だったり;;; )

はてブのコメント欄

 閑話休題。コメント欄とかタグ欄とか、ユーザー主導ではてな的考えが足りなかった、若しくはチッチャかったのかどうかについて。
 えー、どのくらいの方が覚えてらっしゃるか分からないのですが、はてなブックマーク(現通称 はてブ)は、ベータリリース直後、コメント機能もタグ機能も無い、無断リンクならぬ無言リンクでした。


 その頃に私はこのダイアリーに、『【考察】「はてな」らしい「はてなブックマーク」の為に』(長いです)という雑記を書きました。


 前段の趣旨は、

  • はてなのサービス全般に言えることですが、「はてな」というのは、情報を登録する楽しみと、それを利用する楽しみ組み合わせが絶妙
  • はてなブックマークは、ここでバランスを欠いている
  • 『“ソーシャル(情報を利用する楽しみ)”の方に重点を置いていて、“情報を登録する楽しみ”がおろそかになっている
  • 『“情報を登録する”ことについては、カテゴリー・キーワードの自動抽出やタイトルの共用化等、ユーザーの負担を極力減らす方向、いわば「情報を登録する煩雑さ」を感じさせない仕組みづくりに見えるが、楽しみは少ない
  • 『私はこのままでは途中で失速しそうな気がする』
  • “楽しく登録する”サービスに育てたい

となってます。


 また、“情報を登録する楽しみ”として、

  1. 自分のブックマーク集を育てる楽しさ【コメント欄のススメ】
  2. 自分の登録したブックマークを利用してもらう楽しさ (参考)
  3. 自分にとって使いやすいブックマーク集を作る楽しさ (参考)

を挙げています。


 「はてブにコメント欄を」という要望は多くのユーザーから出ていました。
 私もその一人として、“はてならしさ”を追求する立場からプッシュしました。


 その後、伊藤CTOは、『はてなブックマークにコメント機能を追加しました - naoyaのはてなダイアリー』にて、

コメント機能は多くのみなさんからご要望をいただいていたのですが、単にコメントが付けられるだけじゃなく、もっと面白い何かがあったらいいなあ...とおもっていました。そこで閃いたのが、エントリーページでコメント一覧を見ることができるというもの。
(略)
ある特定のページに、他のひとがどんな感想をもっているのかというのを一覧することができて、とってもベンリです。みなさんもどんどんコメントを付けてみてください。

と、自らの方針とアイデアでコメント機能の実装を行われました。
 おそらく、『エントリーページでコメント一覧』みたいなアイデアの元になる有益な助言や要望等が、多くの皆さんから寄せられたのでしょう。
 憶測ですが、このときの騒動が、伊藤CTOが「はてならしさってなに?」と真面目に考察されるキッカケになったのでは無いかと愚考しています。

タグについて

 覚えている方は憶えていらっしゃるとおり、伊藤CTOは、当初タグの導入に消極的でした。(参考: 『はてなブックマークとTagging - naoyaのはてなダイアリー』) *1

タグをつける作業とコメントする作業は、人の思考回路の視点から考えると、そのページに書かれていることを要約するという非常に似通った作業ではないでしょうか。(略)ゆえに、タグによって分類による共有を促すことと、コメントによる感想の共有をすることは、両立できそうでなかなか難しいのではないかと感じています。
(略)
とは言え、自動カテゴライズやキーワード抽出による横串があまりうまく機能していないのも、一ユーザーとして認識しています。その辺りをどのような手段で解決していくかはまだ考えきれていません。それはタグかもしれないし、自動抽出の精度を上げることかもしれないし、また別の方法かもしれません。

はてなブックマークとTagging - naoyaのはてなダイアリー

 これに対して、私は『?Bのタグとコメント』という雑記で、

 sasada的には、コメントとタグは異なる役割を持っていると思います。
 また、コメント投稿とタグ付けを同時に行うことの困難さ(と、使い分けのあいまいさ)は、タグ付けのタイミングをずらし、「見かけ」を工夫することで解決可能だと考えます。

?Bのタグとコメント - 回答こそ我が人生!! (ウソ

と述べ、コメントとタグの違いとして

 ?Bのコメントは、(略)一つのURLに対して、一人一人が異なる情報を書き込むことに、その意義と面白さが有ります。構図としては、[ URL (1 : N) コメント ]の関係ですね。
これに対して、タグ付けは[ タグ (1 : N) URL ]の関係を持ちます。
 複数のURLに対して、共通のタグを付けてグルーピングすることに意義や意味があるわけです。
 意思表示の方向が正反対ですよね。
 全体の関係としては[ タグ (1 : N) URL (1 : M) コメント ]です。


 タグの存在意義は『或るタグ(の、可能なら集合演算結果)にどんなURLが有るか』を俯瞰することであって、コメントの存在意義である『或るURLに対して個々のユーザーがどのような反応をしているか』の俯瞰とは大きく役割が異なります。

?Bのタグとコメント - 回答こそ我が人生!! (ウソ

と述べました。その上で、タグを採用する点について、

  1. タグは複数URLを関係付ける機能であり、単一URLに対する反応をサポートするコメント機能とは役割が異なるものである。
    [ タグ (1 : N) URL (1 : M) コメント ]
  2. タグ(検索)機能は、興味のあるURL(エントリー)へたどり着くための機能であり、?Bの弱点(新着と人気エントリー以外の閲覧難)を補間するために必要な機能である。
  3. はてなアイデアにある「フォルダー機能」を (共有フォルダーとして)採用すれば、ユーザーの混乱を避け、エントリー時の手間も増やさずにタグ機能を実現できる。コメントとの住み分けも可能である。
?Bのタグとコメント - 回答こそ我が人生!! (ウソ

と考察しました。
 このときのはてブ エントリーの『はてなブックマーク - ?Bのタグとコメント - 回答こそ我が人生!! (ウソ』で『naoya bookmark タグ付けは[ タグ (1 : N) URL ]の関係』とコメントをいただいていますので、何がしかのインスピレーションを得るためのお役に立てたのかもしれません。


 その後、『はてなブックマークとTaggingその後 - naoyaのはてなダイアリー』にて、

先日の日記にたくさんトラックバックをいただきました。あと、はてなブックマークでも相当数ブックマークしていただきコメントもいただきました。貴重なご意見、色々とありがとうございます。


それで、色々読んでいて、やっぱり Tag の実装をなんとかしてみたほうがいいのか、それともひとまず自分の過去のエントリーを見つけやすいように自分用 Tag を実装するのがいいか...と色々悶々と考えています。はてなダイアリーの見出しのように、[hoge][foo]タイトルとして云々というのがいいかなとかも思っています。

はてなブックマークとTaggingその後 - naoyaのはてなダイアリー

と、ご自分で考えつつ、それをオープンにして、(控えめに?)意見を募ってらっしゃいます。この手法は今に至るまで伊藤CTOの“やり方”として定着してますね(笑)


 で、誘われると断れない私は、One of themとして『タグとコメントとか色々』を書いてます。(これも例によって長文です)

 自分用Tagとのことですが、自分のブックマークのみの検索用途なら、コメント検索機能を応用できますし、実装の優先度はそんなに高くないと思います。しかし、ニーズは大きいでしょうね。(略)
 この切り口での個人的な理想は、

  1. 自分用Tag名は、自分だけが付けられる。
  2. コメント同様に、自分で管理できる。([hoge][foo]コメント、のイメージ)
  3. でも、検索対象は全ユーザーで共有できる。(全エントリーに対して自分用Tag名で検索できる)

という感じです。(略)


とりあえずのsasada的結論

  • もう一つくらい(たとえばカテゴリ必須等の)制約を付けたら、全エントリー検索が出来る場合
    • キーワードツリー問題を避ける為に『[hoge][foo]コメント』を採用。すなわち、自分用Tagはコメントと同じレベルのユーザーレコードに格納。
    • どこまで検索対象を広げられるかは、開発スタッフ様の努力に期待。
2005-05-10 - 回答こそ我が人生!! (ウソ

という意見を出しています。
 これらも、ずっと上の方で述べた、『「はてな」というのは、情報を登録する楽しみと、それを利用する楽しみの組み合わせが絶妙』という私の考えに沿った意見です。最近はもっと短く『楽しく入力、便利に活用』と言ってます。Web2.0の黎明期にこれを言い出したので、落ちこぼれずに済んだのかもしれませんね。


 さて、伊藤CTOが私や他のユーザーさんの意見をどの程度参考にされたのかは存じ上げませんが、『ブックマークの機能追加 - naoyaのはてなダイアリー』を拝見する限り、

コメントを付けるという行為を邪魔せずに分類用の識別子を付ける...うーん、と思っていたのですが、よくよく考えてみるとはてなダイアリーのカテゴリの書き方って、カテゴリをつけてタイトルを入力するという流れを阻害しないいいインタフェースだよなと気付きまして、この形に落ち着きました。

ブックマークの機能追加 - naoyaのはてなダイアリー

とのことですので、最終的には自分の中で吸収・整理した知識を持って決断されたのだと思います。

私の思うところ

 以上当時の経緯を長々と述べました。
 当時は、はてなブックマークを、『楽しく入力、便利に活用』というWeb2.0的な(他者の同様のサービスとは違う)新サービスにする為に真剣に検討されていたのだと思います。
 「個々の機能がどうこう」じゃなくて「はてならしいサービスにするには、如何なる付加価値をつけるべきか」を真摯に求めてらっしゃったのかと。


 そういう意味では、d:id:kowagariさんのご要望『ユーザーの要望のはるか上の次元で、様々な仕様が決まっていくっていう展開を俺は見たいんです。そこにうなるような思想を感じたい』は、実績として *当時は* 存在していたと思います。*2


 幸い、(株)はてな社にも豊富な人材が揃ってきたようですので、今後も、私がビックリして腰抜かすようなサービスを連発してくださるものと期待しています。(^^)

どうでも良い追記

 考えるに、伊藤CTOは常にユーザーに自分の考えを(可能かつ有意義な場合)オープンにし、返ってくる反応を自分なりにリファクタリングしたりしてオリジナルのアイデアに昇華させていらっしゃるのかと愚考します。


 ユーザーに踊らされてるのではなく、ユーザーを躍らせて下さっているのだと思います。出来るだけ楽しんでもらえそうな環境を整えつつ。ま、楽しけりゃ、なんでもアリかな、この辺は。とか思ってます。

*1:ちなみに、伊藤CTOは、この時点(2005-5-7)でコメントの効用として、『はてなブックマークの一番良い所っていうのは何でしょう。その中の一つ(僕は一番だと思っているのですが)は、"○○users"をクリックした先、エントリーページでブックマーカーのコメントをまとめて閲覧できることだと感じています』と述べられてます。

*2:時期的に、はてなアイデア導入直前だったあたりが、ビミョーなのですが。はてなアイデア導入後、ユーザー提案も小ぶりにならざるを得なくなってます。市場が、実現困難なアイデアに投資するはずが無いので。なんせ、(偶然)実装済みになったアイデアを終了させるだけでも自力で出来ない状況なのに、ユーザーアイデアをいちいち総てサーベイしてるはずが有りませんよね。面白いけど実現が難しいようなアイデアは、買われることなく流れていくだけでしょう。こう考えるなら、ユーザーサイドから提案するルートは現存しません。